忍び寄る病魔(最終回)

先生「大変長らくお待たせして申し訳ありません。簡易検査の結果が出ました」

自分の唾を飲み込む音が聞こえ、小てママは祈るような仕草をしている。

先生「先程もお話しました通りあくまでも簡易検査になりますがカイ君の喉に有る
しこりは・・・まず脂肪と見てほぼ間違えない組織の状態です」

少しの間無意識に息を止めていたのだろう・・・長い長い溜息が漏れていく。
心底ホッとして、だけど何と言って良いか言葉も見付からず黙っている私達を
横に見ながら先生は続けた。

先生「正直な処、組織を取るのにエコーを見た時、甲状腺にしては血管が少なく
薄々気づいていましたが検査結果が出るまでは迂闊な判断は出来ずお話し
ませんでした。ご心配でしたら検査業者へ依頼しますがどうしますか?」

私はカイの肩を軽く叩きながら心と言葉を整え、乾いてくっ付いていた口を開く。

私「院長先生、色々ご面倒をお掛けしました。そして本当に有難うございます。
検査の依頼は不要です。3年前に1日違いでカイの命を救って下さったのも
先生の判断のお陰です。そして今回脂肪と判断して頂いたのですからその
結果を何より尊重します」

私はパサパサになった口を無理やり開き、続けた。

私「最初甲状腺がんの疑いも有りと聞いた時、今度ばかりはもうだめかなと正直
絶望しかけました。尻尾を振りいつも私を慕い待ってくれてるかけがえのない
大切な相棒なのに、弱気になってしまった本当にダメ飼い主です。でもがんで
なくて本当に良かったです。院長先生の手はがん細胞を脂肪に変る事が出来る
ハンドパワーが有るとか?」

先生「ハッハッ、でももし甲状腺も含めたがん細胞や腫瘍の疑いが強ければ改めて
精密検査を行い結果に基づく治療方法の決定とこれからが大変になる処でした。
私のハンドパワー以上にカイ君はすごく運が強い子なんでしょうね」

と、笑いながらそのゴッドハンドで頭を撫でてくれる院長先生の顔をカイは優しく
そして丁寧にべロンベロン舐めている。

しこりは幸いにも脂肪の塊ではあった。でも肥大化すれば当然切除が必要になる
ので経過観察が必須で有る事と、それを防ぐためにもコレステロールを下げる様
ご褒美も含めた食事の内容を見直しする様注意を頂いた。

もう12歳と3ヶ月・・・いつ何が起こってもおかしくない年齢だ。身体の奥底に潜む
病魔時限爆弾がいつ何時破裂するかも判らない。

これからも黒い相棒をいっぱい撫で廻して少しの異変も見逃さない様にしたい。
“撫でる“って単純で原始的だけど、様々な効能が有りそして誰もが直ぐ出来る
凄い医療行為と確信している。勿論毛艶も良くなるし060.gif

カイは今日もいつもと変わらずご飯を沢山食べそして元気に散歩へ出掛けてくれる。
涼しくなった事も手伝って7歳頃と変わらないスピードで歩く事だってまだ出来る。

横でスタスタ歩くカイが笑顔で私の顔を見上げてくれる・・・こんな幸せがいつまでも
いつまでも続いて欲しいと願いながら「忍び寄る病魔」全8話を終わりにしたい。

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by fspencer | 2015-10-17 15:02 | カイの事  

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