<   2015年 10月 ( 6 )   > この月の画像一覧

 

忍び寄る病魔(最終回)

先生「大変長らくお待たせして申し訳ありません。簡易検査の結果が出ました」

自分の唾を飲み込む音が聞こえ、小てママは祈るような仕草をしている。

先生「先程もお話しました通りあくまでも簡易検査になりますがカイ君の喉に有る
しこりは・・・まず脂肪と見てほぼ間違えない組織の状態です」

少しの間無意識に息を止めていたのだろう・・・長い長い溜息が漏れていく。
心底ホッとして、だけど何と言って良いか言葉も見付からず黙っている私達を
横に見ながら先生は続けた。

先生「正直な処、組織を取るのにエコーを見た時、甲状腺にしては血管が少なく
薄々気づいていましたが検査結果が出るまでは迂闊な判断は出来ずお話し
ませんでした。ご心配でしたら検査業者へ依頼しますがどうしますか?」

私はカイの肩を軽く叩きながら心と言葉を整え、乾いてくっ付いていた口を開く。

私「院長先生、色々ご面倒をお掛けしました。そして本当に有難うございます。
検査の依頼は不要です。3年前に1日違いでカイの命を救って下さったのも
先生の判断のお陰です。そして今回脂肪と判断して頂いたのですからその
結果を何より尊重します」

私はパサパサになった口を無理やり開き、続けた。

私「最初甲状腺がんの疑いも有りと聞いた時、今度ばかりはもうだめかなと正直
絶望しかけました。尻尾を振りいつも私を慕い待ってくれてるかけがえのない
大切な相棒なのに、弱気になってしまった本当にダメ飼い主です。でもがんで
なくて本当に良かったです。院長先生の手はがん細胞を脂肪に変る事が出来る
ハンドパワーが有るとか?」

先生「ハッハッ、でももし甲状腺も含めたがん細胞や腫瘍の疑いが強ければ改めて
精密検査を行い結果に基づく治療方法の決定とこれからが大変になる処でした。
私のハンドパワー以上にカイ君はすごく運が強い子なんでしょうね」

と、笑いながらそのゴッドハンドで頭を撫でてくれる院長先生の顔をカイは優しく
そして丁寧にべロンベロン舐めている。

しこりは幸いにも脂肪の塊ではあった。でも肥大化すれば当然切除が必要になる
ので経過観察が必須で有る事と、それを防ぐためにもコレステロールを下げる様
ご褒美も含めた食事の内容を見直しする様注意を頂いた。

もう12歳と3ヶ月・・・いつ何が起こってもおかしくない年齢だ。身体の奥底に潜む
病魔時限爆弾がいつ何時破裂するかも判らない。

これからも黒い相棒をいっぱい撫で廻して少しの異変も見逃さない様にしたい。
“撫でる“って単純で原始的だけど、様々な効能が有りそして誰もが直ぐ出来る
凄い医療行為と確信している。勿論毛艶も良くなるし060.gif

カイは今日もいつもと変わらずご飯を沢山食べそして元気に散歩へ出掛けてくれる。
涼しくなった事も手伝って7歳頃と変わらないスピードで歩く事だってまだ出来る。

横でスタスタ歩くカイが笑顔で私の顔を見上げてくれる・・・こんな幸せがいつまでも
いつまでも続いて欲しいと願いながら「忍び寄る病魔」全8話を終わりにしたい。

b0112998_144462.jpg

by fspencer | 2015-10-17 15:02 | カイの事 | Comments(0)  

忍び寄る病魔(その7)

先生「無事に組織採取が済みました。出血も殆どありませんので安心して下さい。
こういう時カイ君は辛抱強く我慢してくれる子なので本当に助かります。
では早速組織検査に入りますがあくまでも簡易検査なのでグレーの場合
専門の検査業者へ依頼する事はご了解頂けますか?」

私「ハイ、勿論です。どうか宜しくお願い致します」

先生「それでは検査結果が出ましたらお呼びしますので待合室でお待ち下さい」

ここまで結構な時間が経過していたので小てママを待合室に残し用足しにカイを
連れ出した。
お昼近くの日差しの中、小てつやキラそして健王やクロマメの事やら色々考え
ながらトコトコ歩いていると“そろそろママの所へ戻ろ”と言いたげにカイが私を
見上げる。動物病院へ戻り少し空いてきた待合室で名前が呼ばれるのを待つ。

検査結果がどう出るか・・・心配で心配で言葉少なに私と小てママで代わる代わる
カイの事をただ撫でていた。
そんな気持ちを察してかカイは“どうしたの?”と言いたげに二人の顔を覗き込む。

b0112998_932716.jpg


それから少しすると院長先生が直々に最初に入った診察室へ案内してくれた。
その手には検査結果が入っていると思しきクリアファイルが・・・。

わざわざ奥から出て来て直接案内してくれるって結果が良い?それとも悪い?と
たった数十秒間だったが心が激しく揺れ、頭がクラクラして来た。

つづく040.gif040.gif040.gif040.gif040.gif040.gif040.gif

by fspencer | 2015-10-12 09:34 | カイの事 | Comments(0)  

忍び寄る病魔(その6)

先生「血液からは特に異常は見られませんが一つだけコレステロール値が前回
より高いのがチョッと気になりますね。ま、原因の特定は後程として早速しこりの
組織を採取しますので隣の診察室へ移動しましょう」

血液検査表を見せて頂くと総コレステロール値のみが244mg/dl→349mg/dlへ
上っており基準値の上限を越えている。
最近レバー缶詰の量を増やしたためか?それとも散歩のご褒美を牛肉ジャーキーに
変えたせいか?と色々考えを巡らせたがそんな事より組織検査が先だった。

診察台から“よいこらしょ”と約36kgを降ろしエコー(超音波診断装置)が設置
されている診察室へ小てママと三人で一緒に入る。

エコー画面を鮮明に確認するため灯りを暗くした診察室は初めてでないが
補助のスタッフの方2人が左右に居るいつもと違う雰囲気にカイも少々緊張
しているかの様に見えた。

私と小てママは少し離れた所に居たが、エコー画面でしこりの場所を特定し
院長先生がスタッフの方に目で合図しカイに声を掛けながら針を刺そうと
している。
と、ここまではしっかり見ていたがそれ以降恐くて顔を伏せ目を閉じながら
“カイ、頼むから頑張ってくれ!” と口の中で呟くのが精一杯だった。

少しして恐る恐る顔を上げるとエコーの画面を写真に撮った後組織を採取した
シリンジをスタッフの方が検査ルームへ持込みする処だった。

                            つづく040.gif040.gif040.gif040.gif040.gif040.gif

by fspencer | 2015-10-11 08:31 | カイの事 | Comments(0)  

忍び寄る病魔(その5)

先ずは体重測定から・・・診察台に組み込まれた体重計の表示は前回とほぼ
変わらず35.80kgを指しているがこれを見る度、こ奴のデカさを実感する。

b0112998_230174.jpg


次は血液検査・・・右後ろ足をゴムで縛りアッと言う間に採血が終了する。
いつもながら院長先生の負担を掛けない“手際の良さ”には驚くばかりだ。
検査結果が出る迄の間、他部位の触診や聴診器での診察と目・耳・口腔内を
診て頂いた。

先生「心拍・呼吸音共問題無し、目も大丈夫歯も奥歯に少し歯垢がありますが
   年齢からすれば綺麗な方ですよ。耳は奥の方に耳垢があるので掃除して
   おきましょうかね」

そう言うと鉗子に脱脂綿を巻き薬剤を染み込ませ手慣れた手付きでササ~ッと
耳の中を掻き回す。気持ちが良いのかカイもご満悦の顔をしている。

耳掃除のし過ぎは逆に外耳炎の原因になると言われていたので週1回程度して
いるがやり方が下手で結構汚れていたのが大ショックだった。

そしてスタッフの方がドアをノックして血液検査データを持って入って来た。
院長先生は手に取り上から眺めた後眉間に皺を寄せながら顔を上げ話始めた。
  
                                     つづく040.gif040.gif040.gif040.gif040.gif

by fspencer | 2015-10-09 23:08 | カイの事 | Comments(0)  

忍び寄る病魔(その4)

仕事から自宅に戻りいつも出迎えてくれるカイの前にへたり込みながら詫びた。

「カイよ、明日チクン(動物病院へ行く時に使う言葉)行けないよ。勘弁な、カイ」

カイは尻尾をグルグル回しながら右前足を私の膝にのせて顔をベロ~~~ンと
舐めてくれた。
こんな時、私を見ている目で心の全てを見透かされている気がしてならない。

「僕は全然大丈夫だよ。それより元気出して早く散歩行こ!」って言っている。

金曜日出勤前の早朝散歩の時も特に異常は無し、小てママの午後と夕方の散歩
でも「いつも通りあちこち匂いを嗅ぎ回っているし大丈夫みたい」とLINEが届き
先ずは一安心。

そして帰宅後小てママからいつも通り晩御飯をガツガツ食べたと聞いてホッと
二安心。

夜の散歩の時もいつもと変わりなく取り敢えず明日の診断結果に全てを
託す事にした。

翌日の土曜日、少々出遅れていつもの動物病院へと車を走らせる。
カイはいつも通り後部座席の窓から顔を出して耳とぽっぺたを風でパタパタ
させながら鼻から抜けてく空気を楽しんでいる。

動物病院へ無事到着したが出遅れそして土曜と言う事で少々時間か掛かり
そうな順番だ。
こんな時カイは待合室の床に寝転びリラックスしているがかなりの面積を
占有するので出入りがある度足を引っ張ってモップ掛け状態で動かす。

b0112998_20165092.jpg


待つこと約1時間で「お待たせしました。カイ君、どうぞ~」と順番が来た。
院長先生に改めて事の経緯を話し、しこりの有る部分を伝え早速触診となる。

先生「確かにしこりがありますね。でも触診ではこれが何者か?判らないので
血液検査後に簡易組織検査をしましょう。電話でもお伝えした通り血管が
多い部位なのでカラーエコーで血管を確認しながら慎重に行います。」


                               つづく040.gif040.gif040.gif040.gif

by fspencer | 2015-10-07 20:17 | カイの事 | Comments(0)  

忍び寄る病魔(その3)

翌日も仕事だったが開院時間のAM9時少し前に席を離れ電話を掛ける。
だけど院長先生は早くも診察中との事で、スタッフの方へ大体の状況を話し
院長先生へ伝えて頂く様にお願いした。

そして午後携帯に院長先生から連絡が入る。

先生「喉にしこりとの事ですがどの辺りでどの位の大きさですか?」

私「人間で言いますと喉仏の少し下辺りで鶉の卵より一回り小さいです」

先生「う~ん、難しい場所ですね。診てみなければ詳しい事は言えませんが
   脂肪か若しくは甲状腺がんの疑いもあるので早めに来院して下さい」

「・・・・・・」※一瞬息が詰まり言葉が出ず間が空いてしまう。

先生「もしもし、どうかしましたか?」

私「ハイ、申し訳ありません。がんの場合やはり手術になるのでしょうか?」

先生「進行状況にも依ります。但し全身麻酔ですし血管も多い部位になるので
   非常に難しい判断です。でもまだ決まった訳ではありませんから余り考え
    過ぎず早めに来院して下さい」

私「分りました。お忙しい中色々と有難うございます。仕事の都合で明後日
  土曜日に伺いますので宜しくお願い致します」

と電話を切った後、身体中の力が抜けて行くのが分った。
明日金曜日仕事の都合上どうしても休む訳にはいかないので土曜日に行く旨
院長先生に伝えた自分がどうしようもなく悲しかった。

カイの生死を分けた3年前の「1日の違い」が頭の中を廻り更に私を苦しめる。
※「カイの九死に一生シリーズ」第6回をご参照頂ければ幸いです。

大事な相棒がピンチなのに仕事優先で病院へ連れていけない・・・でも会社を
休むとこっちがピンチになってしまう下っ端サラリーマンの辛さかな・・・。

                                 つづく040.gif040.gif040.gif

by fspencer | 2015-10-03 20:14 | カイの事 | Comments(0)